
「WordPressなら稼げる」という幻想と、その正体について
「WordPressで稼ぐ方法」「ブログで月100万円」「初月から収益化」
ネットを開けば、今日もこの手の言葉が溢れかえっています。まるでWordPressが、無から有を生む錬金術のマシンであるかのように。
しかし、一度立ち止まって考えてみてください。
WordPressは単なる「道具」です。料理における包丁と同じです。高価な包丁を買っただけで一流の料理人になれる人がいないように、「WordPressを導入すれば稼げる」という理屈は本来成立しません。
では、なぜこの思い込みは消えないのでしょうか。
2010年代の亡霊
確かに、そんな時代もありました。ブログを書き、広告を貼り、検索順位が上がれば、それなりの収益になった時代が。
競合は少なく、SEOもシンプルで、「真面目に書いていれば読まれる」余地が残されていました。
ですが、それは過去の話です。
現在の検索結果は、企業メディア、AI生成記事、比較サイト、そして公式情報で埋め尽くされています。そこに個人ブログが割り込む余地は、ラッシュアワーの山手線にスーツケースを引いて乗り込むようなもの。隙間など、どこにもありません。
それでも「稼げる」と言われ続ける理由は単純です。
「稼げる」と言うこと自体が、彼らのビジネスだからです。
売られているのは「希望」
「WordPressで稼ぐ方法」を声高に叫ぶ人々の多くは、ブログ運営そのもので稼いでいるわけではありません。
彼らが売っているのは以下のものです。
- 夢
- 再現性の幻想
- 「自分にもチャンスがあるかも」という期待
情報商材、オンライン講座、コンサルティング、有料note。最も安定して稼げるのは、いつの時代も「稼ぎ方」を教えるポジションに立った人たちです。
農作物を作るより、農業セミナーを開くほうが儲かる。この構造はネットの世界でも変わりません。
WordPressは「メディア」であり「ビジネスモデル」ではない
ここを混同してはいけません。
WordPressはあくまで「情報発信の土台(CMS)」であり、看板や土地に過ぎません。それ自体がお金を生む仕組みではないのです。
稼げるかどうかを決めるのは、以下の要素です。
- 何を売るのか
- 誰に向けているのか
- どんな価値を提供できるのか
商品も専門性もない状態で「とりあえずブログを始めました」というのは、看板だけ立てて店がない状態と同じです。しかもその看板は、誰も見ない高速道路の脇にポツンと立っているのです。
「好き」と「稼ぐ」の冷徹な距離
「好きなことを書けば稼げる」という甘い言葉も、大半は嘘です。
好きなことを書くのは素晴らしいことです。精神衛生上も良く、趣味としては最高でしょう。しかし、ビジネスとして成立するかは別の話です。
市場がない、需要がない、広告単価が低い。
この三重苦を前に「続ければそのうち…」と期待しても、その「そのうち」は永遠に来ません。
PVは伸びず、収益は数円。更新は止まり、ドメインだけが静かに年老いていく。これは才能の問題ではなく、構造の問題です。
それでもWordPressを使う意味
では、WordPressは無価値なのでしょうか? いいえ、使い所さえ間違えなければ、今でも極めて優秀なツールです。
- 専門家が信頼を積み上げるポートフォリオとして
- 自身の思想や経験を体系化するアーカイブとして
- 本業を加速させる補助線として
- 名刺代わりのオウンドメディアとして
このように、WordPressを「主役(収益源)」ではなく「脇役(加速装置)」として位置づけるのが、現代における正しい距離感です。
現実を直視した人だけが得られる資産
「WordPressで稼げる」と本気で信じていた人ほど、うまくいかない時に自分を責めてしまいます。しかし、悪いのはあなたではありません。期待値の設計を間違えていただけです。
「稼げるか?」ではなく、「何のために使うか?」を先に決める。
この順番さえ間違えなければ、WordPressは静かに、地味に、しかし確実に役に立つ相棒となります。
現実はほろ苦いものです。
しかし、その現実を直視し、「夢を売る側」のカモにならずに済んだ時間こそが、あなたにとって一番の資産になるはずです。
Wordpress サイト構築・管理 プラグインとテーマの試行錯誤